【導入事例】一宮市様
業務プロセスを踏まえた伴走的支援で生産性向上
国民健康保険税82.21%、市税97.89%の収納率達成
職員の業務負担軽減や人員不足対策、収納率向上を目指し、アイティフォーのBPOサービス(※)を導入した愛知県一宮市様。催告業務や納付書発送などの事務を外部へ委託することにより、運用開始からの5年間で国民健康保険税の収納率が4.1ポイント改善しました。実現できた理由のひとつは、単なるアウトソーシングではなく、業務改善のためのパートナーとしてBPOサービスを活用したことにあります。担当課である納税課のお二方に詳しく話を伺いました。
- 安田 浩 氏 :一宮市 財務部 納税課 課長
- 花村 陽一郎 氏 :一宮市 財務部 納税課 専任課長

(※)BPO事業は現在、子会社アイティフォー・ベックスが承継し、運用しています。
BPOサービスの導入で収納率向上を目指す
一宮市様は世界三大ウール産地である尾州の中核で、毛織物産業が盛んな都市です。東海地方経済の中心地・名古屋市と、岐阜の県庁所在地・岐阜市の間にあり、約37.5万人が暮らすベッドタウンとしても人気を誇っています。一宮市様では、平成31年4月にBPOサービスを利用して、納税課内に「一宮市納税推進センター」を開設しました。
一宮市様では、税の課税と収納の機能を分離しています。具体的には、市民税課や保険年金課などの部署が、市税・国民健康保険税を計算。今回紹介する納税課が市税・国民健康保険税に関する収納状況を管理し、税の公平性を担保するという役割を担っています。
納税課の使命を一言で表現すると「収納率を上げること」と安田課長は言います。納税課では平成20年頃を境に、新たな滞納の発生を防ぐ取り組みを開始しました。平成22年に市税をはじめとする債権の一部を集中管理する「債権回収特別対策室」を設置するなどの施策により、収納率は着実に上昇していきます。
しかし、それまで順調に推移していた収納率の伸びは徐々に頭打ちとなってしまいます。そこにはどのような課題があったのでしょうか。安田課長は当時を振り返ります。

「催告や集金を担うのは『納税推進員』と呼ばれる嘱託職員でしたが、推進員の高齢化が進み、機動力や継続性に問題が発生しはじめたのです。また、嘱託職員の指揮は市職員が担っていたので、職員が介在しないと業務が完結しないことも改善すべき点でした。こうした課題への対応を考える中では、どうしてもコールセンターのような手法がまず想起されがちでしたが、より根本的な解決策を模索する中で、平成28年頃にBPOサービスの存在を知りました」
納付通知の発送や電話での催告、書類の管理などの「処分を伴わない」定型的な業務を包括的に委託することで、差押えをはじめ市職員にしか行えない業務に集中できる――。業務効率の改善による収納率の向上が、BPOサービス活用で一宮市納税課様が目指すことでした。そして、嘱託職員や職員の人数を調整し予算を確保することで、BPOサービスの導入に向けて動き出します。
業務全体の最適化を目指し、納税推進センター開設
複数の提案を比較検討した結果、一宮市様はアイティフォーのBPOサービスを選択。平成31年4月より、「一宮市納税推進センター」(以下、納税推進センター)として、市税・国民健康保険税の滞納整理業務を担っています。
BPOサービスを導入した理由は何だったのでしょうか。安田課長は「機能」ではなく「業務プロセスを改善するための提案」を行った点に引かれたと語りました。
「提案を受ける中で特に印象的だったのは、私たちの課題を的確に捉え、解決に向けたコンサルティング的な提案まで踏み込んでくれたことです。電話・文書・訪問による催告は委託要件として組み込んでいましたが、同社の知見を反映した提案によって、要件を一段と整理できました。さらにSMS(ショートメッセージサービス)による催告について相談したところ、サービス開始時から利用できるとの回答があり、IT系企業ならではの対応力も感じました」
また業務の手戻りを減らすための体制づくりについても、明確なビジョンを示していたと安田課長は続けます。
「嘱託職員からの手戻りが多いという悩みに対しては、マニュアルの整備や研修を徹底することによりBPOスタッフ内で業務を完結させると、頼もしく話してくれました。単純な役割分担ではなく、業務プロセスを理解した上で収納業務を支援する提案をしてくれたことが、最終的な決め手でした」
SMSによる初動対応が収納率の改善に貢献

現在、納税推進センターが担う主な業務内容は、以下のとおりです。
- 催告業務:SMS催告、電話催告、文書催告、訪問催告
- 事務補助・窓口業務:滞納整理に必要な資産調査などの書類整理、口座振替に関する手続き、納税課窓口での市民対応
催告業務に加え、収納や事務手続きの補助業務を納税推進センターが担うことにより、BPOサービス導入の目的であった業務分掌の明確化を実現。納税課の担当職員が困難事案に注力できる環境を整え、業務負担軽減による働き方改革に伴う生産性向上の結果、収納率に明確な上昇が見られました。国民健康保険税の合計は78.11%(平成30年度)から、82.21%(令和6年度)と4.1ポイントも改善。また、市税の合計についても97.32%(平成30年度)から97.89%(令和6年度)へと増加しました。
滞納整理における納税推進センターの貢献について、安田課長は「初動対応の早さ」と「丁寧なコミュニケーション」を挙げました。
「納税課の各職員は多数の案件を担当しているので、すべての滞納に目を行き届かせることが困難でした。一方、納税推進センターのスタッフは、税の収納状況をきめ細かく把握し、滞納の発生時にすばやく催告を行うことで、収納率の改善につながっています。所得の申告により市税が減免となることの案内や、支払能力がない世帯への適切な制度の紹介などにより、滞納の発生を防ぐ取り組みも効果を上げています。また、徴収整理問題研究会(※)で講師の方のお話を聞いた際に、『電話催告はすでに古くなりつつある』という指摘が非常に印象に残りました。以前は電話や文書での接触が中心でしたが、時代の変化とともに、着信があっても電話に出ない、封書が届いても開封されないというケースが増え、まず要件が相手に伝わらなければ次の行動につながらないことを強く実感しています」
(※)自治体の徴収担当者の皆さまに、税金などの回収率向上と業務効率化について学んでいただけるよう、アイティフォーが年に数回開催している勉強会・交流会。
未納者と早期にコンタクトをとるために、効果を発揮している手段がSMSです。時代とともにコミュニケーションの形が変化し、見知らぬ電話番号からの着信に出ない人や、届いた封書を開封しない人が増えています。そうした状況の中で「市民が持ち歩くスマートフォンを通じて、用件をすぐに伝えられるSMSは非常に有効な催告手段です」と安田課長はSMS催告の有効性を強調しました。
「SMSは、短い文章でも要件を端的に伝えられ、市民の方が内容をすぐ理解しやすい点に強みがあります。電話のように折り返しを待つ必要がなく、文書よりも素早く反応を得やすいため、時代に合った催告手段だと感じています。実際に、SMSをきっかけに納付や相談につながるケースもあり、その有効性を実感しています」

コールセンター機能だけでは実現できない、業務代行の枠を超えた提案で収納率改善

アイティフォーのBPOサービスは、導入して終わりではありません。日々の業務の中で発生した課題を改善し、受託先の業務効率を最大化する提案を行っています。例えば、納税課の幹部職員と、アイティフォーの業務責任者が出席する月次定例会を開催。催告業務や収納金額などの報告や、業務改善についての提案を行っています。
連絡・調整を担当する花村専任課長は月次定例会の意義について次のように評価しました。
「納税推進センターの報告と提案は具体的です。『例えば、軽自動車税が伸び悩んでいるので、こうした施策の実施を考えています』というように、具体的な対策を提示してくれるのです。市側から依頼をするのではなく、課題の整理から施策立案まで主体的に提示してくれるレスポンスの良さを頼もしく思っています」
定例会は会議としての一定の緊張感を持ちながら、自由な空気で意見交換が行われています。その中で生まれた新しい施策や市民サービスもあります。
「納税を促すダイレクトメール送付の提案を受けました。用件を端的に伝えられるSMSと同じ発想で、ポストからハガキを取り出すだけで内容を理解できるため、問い合わせ窓口への反応が増えたと報告を受けています。また近年増加する外国籍住民への催告のため、英語に加えてベトナム語のダイレクトメールも自主的にご用意いただきました。目を引くように、郵便物を目立つ色にするなどの工夫もあり、柔軟なアイデアが出てくることも納税推進センターへ業務を委託したことの利点でした。私たちが期待するのは、問い合わせ対応を確実に行うコールセンター的な機能はもちろん重要ですが、それだけでは業務全体の安定運営や改善にはつながりません。人事異動によって担当者が数年ごとに替わる自治体業務においては、定型業務を継続的かつ安定的に担いながら、運用改善まで提案してくれる存在が必要だと感じています」
さらに、「納税推進センターの業務プロセスを納税課が参考にすることで、業務が効率化した事例もある」と花村専任課長は言います。例えば、滞納額が比較的少ない滞納者に納税推進センターから送付していた催告書付き納付書を、納税課の業務にも導入し、収納率の向上を図っています。また、「納税推進センターの業務マニュアルを市役所側へフィードバックすることで、作業の標準化・高品質化を図ることができました」と業務プロセスの改善につながった点も花村専任課長は評価します。
BPOサービスについて、催告文書の発送代行などの機能だけでなく、業務プロセス全体を最適化するような価値を見出す一宮市納税課様。今後は「従来の催告だけでなく、国民健康保険資格の喪失手続き案内、固定資産相続登記の周知など、滞納を防ぐ事前周知に向けた取り組みの可能性をBPOサービスで検討したい」と安田課長は展望を語りました。

最後に、同じ課題をお持ちの自治体様に向けて、安田課長は次のようにメッセージを残しました。
「事業者の選定にあたっても、単に仕様どおりの業務をこなせるか、価格条件が合うかといった観点だけではなく、何をどこまで実現したいかというビジョンを明確にし、各事業者がどのような提案を行えるか、将来的な発展性や拡張性まで含めて評価することが重要です。導入そのものを目的にするのではなく、業務を継続的に支え、改善を積み重ねられるパートナーであるかどうかが、BPOサービス活用の成否を左右すると言えますね」
