【導入事例】株式会社ながの東急百貨店様

初期投資35%減、業務効率2倍 攻めの営業戦略への転換を支援

ながの東急百貨店× アイティフォー「RITS」

業務や決済方法が多岐に亘る百貨店各社では、システムを刷新した直後にトラブルが起きやすいが、入念な準備でその最少化に成功した地方百貨店がある。 ながの東急百貨店だ。 2025年4月に、アイティフォーの百貨店向け基幹システム「RITS(リッツ)」と決済システム「iRITSpay(アイリッツペイ)」が本稼働したが、要件定義の段階で社内を横断したプロジェクトチームを発足。 情報の共有を徹底するとともに、リーダーやサブリーダー、インストラクターなどの役割を定めて全従業員の習熟度を高めた。 稼働日には、各階にインストラクターを配置。 売場で発生する質問や課題への一次対応窓口の役割を担わせる体制を構築した結果、大きな混乱なく新たなシステムに移行できた。 初期投資を従来のシステムの約65%に抑えられ、業務効率が最大で2倍に向上するなど、すでに多くの効果を享受しており、今後は販促や顧客基盤の強化などにも役立てる。 新しいシステムに早く慣れ、攻めの営業戦略に活用する― 。 ながの東急百貨店は理想的なスタートを切った。

ストアーズレポート2026年1月号表紙

インタビューご出席者

※肩書きは当時のものです。

  • 太田 誠 氏   :ながの東急百貨店 執行役員 業務本部経営統括部長
  • 荒井 泰貴 氏  :ながの東急百貨店 業務本部経営統括部 情報システム統括マネジャー
  • 髙山 隆治 氏  :ながの東急百貨店 業務本部総務部 商品管理・用度統括マネジャー
  • 田口 千晶 氏  :ながの東急百貨店 営業本部外商部 外商企画担当統括マネジャー
  • 金井 友子 氏  :ながの東急百貨店 営業本部外商部担当統括マネジャー兼サテライト店外商統括マネジャー
  • 山口 剛慎 氏  :ながの東急百貨店 業務本部経営統括部 情報システム担当マネジャー
  • 小野澤 貴子 氏 :ながの東急百貨店 業務本部経営統括部 情報システム担当マネジャー

店頭だけでなく外商もサポート

RITSは、ながの東急百貨店を含めて14の百貨店が利用する。 地方百貨店を中心にユーザーの輪が広がっており、百貨店の複雑な商慣行に対応した仕様や拡張性、優れたコストパフォーマンスなどが支持の源泉だ。

さらに、2026年12月の稼働を目指してリニューアルを推し進めており、より分かりやすく、便利に生まれ変わる。

ながの東急百貨店は、過去にも基幹システムのリプレイスでRITSを候補に入れた。 最終的には店頭だけでなく外商もサポート見送ったが、6年余り経った23年5月にRITSの導入を決定。 太田誠執行役員経営統括部長が理由を説明する。

「複数社のシステムを比較検討し、コストや機能などからRITSを選んだ。 最も期待したのは初期投資の大幅な軽減。 制度や税率の変更、インボイス、クレジットカード情報の非保持化などに対応するため、従来のシステムに数億円規模の投資をしたが、長い目で見た時、RITSはリーズナブルに改修できる。 次のリプレイスでも大きな費用をかけずに済む。 末永く付き合えると判断した。 機能面でも、従来は当社仕様にカスタマイズしたシステムを用いており、ガラパゴス化している部分が多かったが、業界標準に切り替えられ、ひいては業務の効率化にもつながる。 取引先にとってもメリットだ」

基幹システムの刷新に伴う実務を先導した荒井泰貴情報システム統括マネジャーが補足する。

「当社は(百貨店と専門店を融合させる)ハイブリッド化リモデルを推進中で、そもそも百貨店仕様のパッケージを継続するかどうかから検討し、必要と判断してRITSを採用した。 RITSは法令対応の手間やコストを圧縮できるため、多様化するお客様の購買動向に合わせた新たな施策に充てる投資を増やせる。 どうしてもカスタマイズしなければならない機能も、同業他社の事例があってコストを下げられた」

実際、初期投資は従来のシステムの約65%に減少。 独自に発行するポイントの管理、クーポンコードをキーにしたポイント倍率の設定、取引先の販売付帯経費の集計、既存情報分析システムとのデータ連携などをカスタマイズしたにもかかわらず、だ。 業務効率の改善では「これまでクレジットカード、QRコード、電子マネー、楽天ポイントなど複数の端末が必要だった決済操作が1台にまとめられた。 売場での業務の煩雑さが減り、お客様を待たせる時間も短縮できた。 また、金券を種類ごとにPOS登録することで、レシートの改善を図りつつ、精算業務の効率も大幅に向上した。 もう1つ、期末の棚卸しでハンディターミナルを借りていたが、不要になる見込みだ」(荒井氏)。

髙山隆治商品管理・用度統括マネジャーは「業務がスピーディーになった。 物産展などではPOSの回転率が大事。 スピードが上がれば、買い回りが増える。 今までは回転率を上げるため、別端末で処理する楽天ポイントは会場内の専用カウンターで後付けしていたが、お客様の手間暇を省けた」とメリットを挙げた。 太田氏は「体感で3割くらいPOS操作のスピードが上がった。お客様をお待たせしなくなった」、荒井氏は「全館でならすと、応対を含めれば3割どころか最大で2倍になったのではないか」と手応えをつかむ。

店頭だけでなく、外商でもRITSは活躍する。 「以前のシステムでは法人外商の売掛管理で次年度のランク判定を、年度(1月期決算)における買上げ金額に応じて集計し、4月1日から適用していたが、そのデータは①集計除外②口座は別でも同一企業グループの場合は合算する―などの条件を踏まえ、担当部門が複数人の目を通して2月~3月下旬に作成していた。 RITSはパッケージの機能が充実しているため、システムが自動で条件に照らし合わせてくれ、業務の効率が上がる。 何より、外商のお客様の新しいランクが4月1日でなく期初に自動反映されるようになる」(荒井氏)。

田口千晶外商企画担当統括マネジャーは「使いこなして、受注書などを手書きから脱却できれば、お客様を訪問する時間が増え、商機が増える」と期待を寄せる。

社内の結束も促した。 太田氏は「組織を全社的に横断して連携したプロジェクトを構築でき、社員がつながりを強めるきっかけになった」と笑顔を浮かべる。

ストアーズレポート2026年1月号35ページの図

ストアーズレポート2026年1月号35ページより

リプレイスを人財育成や属人化の解消に役立てる

百貨店の業務や決済方法は複雑で、新しいシステムが稼働した直後はトラブルが続出しやすい。 従業員のミスも、システムの不具合も、どちらも発生する。 しかし、ながの東急百貨店は「想定の範囲内」(太田氏)に留め、「お客様へのご迷惑、トラブルには至らなかった」(荒井氏)。 その背景には〝先人の知恵〟の収集、プロジェクトによる組織的な情報共有と教育がある。 「(アイティフォーが定期的に開催する)ユーザー会で同業他社から『ここに気を付けて』、『こういうことが起きるから覚悟しておくべき』などと助言され、とても役に立った。 事前に準備できた。 前回のリプレイスの方が大変だった」と太田氏。 荒井氏は「営業や販促など所属の枠を越えて機能区分ごとにプロジェクトチームを組んだのが奏功した。 要件定義の段階で(稼働後は主にシステムを活用する)営業部から選抜した社員に入り込んでもらったり、リーダーやサブリーダーの役割を設けて教育などの指揮系統を明確化したりしたのも効果的だった」と振り返る。

教育も工夫を凝らした。 金井友子外商部担当統括マネジャーが解説する。 「各部門から2~3人のインストラクターを任命し、アイティフォーからマニュアルをもらい、①日中の売上げ登録に必要な操作のみ②開局から売上げ登録と精算業務まで③未決や貸出ま でを含めた全ての操作―の3つに分担。 ①と②は約1時間、③は3時間程度の時間枠とし、約1カ月かけて入念に教育した」。 続けて「県民性が真面目で、従業員は自主的に学んでくれた。 1回の研修で30~40人を集め、2~3人のインストラクターで教えたため負担は大きかったが、教育係には入社3年目の社員もおり、人財育成の機会にもなった」と〝副産物〟を喜ぶ。

荒井氏もインストラクターの重要性を指摘する。 「新しいシステムは入力の仕方から変わり、本稼働日に各階の運用リーダーの金井とインストラクターがいたのは良かった。 何か困った従業員がいたら、インストラクターに聞いてスムーズに対応できた。 また、問題や課題はインストラクター経由で、アイティフォーのスタッフも待機する『プロジェクトルーム』に集約できた。 アイティフォーも本稼働日と翌日は各階にスタッフを配置してくれた」。 ながの東急百貨店とアイティフォーのタッグが、スムーズな滑り出しに導いた。

経験豊富なキーマンの存在も見逃せない。 荒井氏が「値札や分類コードの桁数も変わったが、上手く取りまとめてくれた」と称賛する、髙山氏だ。 「先々代のシステムからリプレイスに関わっているが、今回はコード体系の整備など主にマスター管理を担当した。 これまでの分類コードは3桁・3桁・3桁だったが、4桁・6桁・4桁に移行。 それに伴い、全館共通のコードを割り当てるため、全体を整理して紐付ける作業に多くの時間を要した。 具体的には各部門に担当者を選任し、必要なコードを抽出し、それを全館で集約および調整した。 税区分や税率なども複雑に絡み合い、細心の配慮が必要だった」とエピソードを披露した。

太田氏も、髙山氏の貢献に感謝する。 「百貨店の取引は買取と売仕に分かれるが、絶対にミスは許されない。 マスター管理の不備によるトラブルは同業他社から聞いており、髙山が経験を生かして旗振り役を全うしてくれた。 既存のシステムとの連携も上手くいった」。 重ねて「後進には『商品コード体系の変更は重要と捉え、POSと基幹はセットでリプレイスすべき』と伝えたい」と警鐘を鳴らす。

功労者の髙山氏だが、危機感を抱く。 「ノウハウを有する社員が定年などでいなくなるリスクを看過せず、若手に経験を積ませなければならない」。 実際、システムの担当者が1人という地方百貨店もある。 業務の属人化は危険だ。 太田氏は「RITSの採用は(次に刷新が必要な)7年後のコストを抑えるためだけでなく、属人化からの解消のためでもある。 RITSは地方百貨店に必要なシステムが標準化されているからだ」と強調する。

本稼働日を見据え催事を入れ替える

もちろん、全てが順風満帆だったわけではない。 田口氏は苦労話と現状の課題を口にする。 「RITSの導入に際しては『(業務を)パッケージに合わせよう』の方針で、カスタマイズする機能を絞り込んだが、例えば請求書のレイアウトから変わった。 朱印が黒色で印刷されるため、『(日本の商慣習として)朱印でないと抗議が来るのではないか』と不安だったが、蓋を開けると全くなく、取り越し苦労だった(笑)。 請求書の体裁が変わり内容が分からなくても、取引先は『システムが切り替わると大変ですよね。分かります』と寄り添ってくれた。 外商の担当者が高齢化しており、教育により力を入れる必要があるというのが現状の課題だ」。

太田氏と荒井氏は、時間をかけた啓蒙活動の重要性を再認識する。 太田氏は「8年間同じシステムを使ってきたからこそ、身体が慣れるまでは『なんでこうしたのか』といった不満の声が出るのは仕方ない。 いかにスムーズに浸透させられるか。 事前の準備がもっと必要だった」と、荒井氏は「十分に準備したつもりだが、今振り返ると足りなかったかもしれない。 ただ、アイティフォーは課題管理がしっかりしており、稼働後もヒアリングし、一つひとつ問題を解決してくれる。 問題を吸い上げ解決するためには、当社の各部門との調整が不可欠だ」と、それぞれ語る。

山口剛慎情報システム担当マネジャーは「システムを乗り換える時は、否が応でもハレーションは起きる。 売場からの不満の声も少なくはなく、より丁寧な対応が求められた。 慣れるにつれて減ってきており、各売場でも早く慣れる方法を考えてくれている」とコメント。 小野澤貴子情報システム担当マネジャーは「2つの物事を並行して考えなければならなかった。 まず従来のシステムの処理を理解した上で、カスタマイズするかしないかの検討に時間がかかり、次に現場から上がる変化への不満や要望に対応しなければならなかった。 一方で『決まったからにはやろうよ』という声も上がり、助けられた」と回顧。 「POSの研修に重きを置いたが、後方業務や発注業務、伝票業務にも時間をもっと割くべきだった。 本稼働後は誤った伝票が多く、そのリカバリーに手間と時間を要した」とした。

RITSを採用する百貨店は毎年増えており、共通基盤化の加速が予想される。 基幹システムの刷新を検討中の百貨店に対し、金井氏は「4月1日のスタートは避けるべき」と助言した。 「いわゆる『入卒需要』が多い時期で従業員が忙しく、研修を実施しづらい」(金井氏)からだ。 髙山氏は秘策を明かす。 「当社の本稼働日は例年だと物産展の時期で、混雑が予想された。 ゆえに1年前の時点で催事の計画を変え、レジ客数が少なく、かつ一定の売上げを確保できる『大黄金展』を充てた。 その前の催事も早めに切り上げ、リプレイスへの準備期間を設けた」

RITSにも伸び代がある。 荒井氏は「決済端末の処理速度がもっと短縮されれば、お客様の体感が変わる」と指摘。 金井氏も「レシートを待つ時間が長くて不安になる。お客様が『もしかして、クレジットカードが使えないのではないか』と思いかねない」と進言する。 太田氏は「今後はタブレットレジに期待したい。化粧品売場などは混雑を緩和できる。目下、当社におけるキャッシュレス決済の比率は7割に上り、親和性が高い。また、食品の集合レジでセミセルフに対応してほしい。商品は当社で登録すれば問題はクリアできる」と要望した。

システムの〝最適化〟が成長戦略の原資を生む

ながの東急百貨店は2026年、駅前開店60周年を迎える。 リモデルの継続をはじめ、攻めの戦略を講じる方針だ。 26年1月下旬には「LINE」のミニアプリを開始予定。 情報発信の強化、クーポンの配布などで新客の開拓、既存顧客の購買意欲の喚起を狙う。 LINEの「友だち」は約4.5万人で、最も成長している顧客基盤だ。 太田氏は「(ミニアプリによる)デジタルポイントカードの発行、ポイントの付与、セグメント別の販促、タイムリーな情報発信などで、顧客基盤を強化する」と力を込める。 「RITSの採用でシステムの初期投資を抑えられたからこそ、LINEのミニアプリにもコストをかけられた」と荒井氏。 経営資源を有効活用するためにも、システムの〝最適化〟は必須だ。 ながの東急百貨店の「選択と集中」は理に適っており、地方百貨店の勝ち筋だ。

※当記事は、株式会社ストアーズ社の許諾を得て転載しています。
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掲載日:2026年02月04日

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