ストアーズレポート2022年1月号掲載記事

地方百貨店の“共通インフラ” 構造改革支援する「RITS」

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ストアーズレポート2022年1月号掲載記事 地方百貨店の“共通インフラ” 構造改革支援する「RITS」

※当記事は、株式会社ストアーズ社の許諾を得て転載しています。
掲載日:2022年1月1日

 百貨店業界で、じわじわとユーザーを増やすベンダーが、アイティフォーだ。百貨店の業務を総合的に支援するシステム「RITS(リッツ)」は15社以上、インターネット通販の強化を支えるシステム「ITFOReC(アイティフォレック)」は7社以上が、それぞれ採用。様々な決済を1台で可能にする端末「iRITSpay(アイリッツペイ)」も、都内の某百貨店が1000台以上を導入した。百貨店業界に特有の業務やルールなどを踏まえた、分かりやすく使いやすい仕様に加え、いわゆる「オープンシステム」や「クラウド」だからこそ可能な、法改正へのスピーディーな対応、イニシャルコストやランニングコストの抑制が、広く支持されている。その評判を聞き、商談中の百貨店も複数ある。コロナ禍で業績を伸ばしづらいからこそ、業務やコストの構造改革の好機だ。そしてそれは、多くの百貨店で老朽化したシステムにも当てはまる。投資すべきは、売場やネット通販だけではない。


 「OMO」や「DX」といった言葉が一般化しつつあるにもかかわらず、メンテナンスもままならない古いシステムを未だに使い、専門人材の不足にも悩まされる百貨店は少なくない。とりわけ財務基盤が弱い地方百貨店は、多くの費用を要するシステムの刷新や専門人材の雇用に及び腰だ。アイティフォーは、そこに商機を見出す。「2021年4月に事業本部長兼流通・eコマースシステム事業部長に就いたものの、コロナ禍で当面は商機がないと思っていたが、むしろある」。大枝博隆取締役執行役員は意欲を燃やす。
 百貨店業界では「ベンダーを切り替えると、従業員が新しいシステムの使い方を覚えるまでに時間がかかり、業務でのトラブルが相次ぎ、むしろ効率は悪化する」という説も根深いが、大枝氏は「パッケージを丸ごと使ってもらえれば、ほぼ起きない。トラブルの原因の多くは、独自のカスタマイズ。岡島様などはトップダウンで『システムを業務に合わせるのではなく、業務をシステムに合わせるように』と徹底してくれたため、スムーズになじんだ。カスタマイズしなければ、余計なコストもかからない。商談でも『独自の仕組みが良いとは限らない』と伝えている」と強調する。
 2004年に販売を開始して以来、15社以上の百貨店が利用するRITSは、まさに百貨店仕様=B必要な機能が集約されており、ローコストでハイクオリティ、汎用性にも優れる。
 流通・eコマースシステム事業部の戸枝靖博氏も「構造改革を支援するだけでなく、当社では『地方』や『地域』での企業の連携にも力を入れており、相乗効果を期待できる。地方都市は景気の回復が遅れており、『当社のシステムはコストカットに繋がる』とも訴求したい」と自信を示す。

ローコストで導入・運用
社員の最適配置にも寄与

地方百貨店共通インフラRITSとそのファミリー

 そのRITSは、発注や棚卸、買掛金管理などの「基幹商品管理システム」、POSを中心とする「基幹販売管理システム」、クレジットカードやポイントカード、外商などの会員を管理する「基幹顧客管理システム」、クレジットカードや電子マネーなどの「決済システム」、友の会や商品券などの「前受金管理システム」、中元および歳暮から慶弔まで対応する「ギフト統合管理システム」の6つのモジュールで構成。戸枝氏は「RITSはパッケージシステムで、独自開発と比べて費用を大幅に削減できる。自社でサーバーを構えずに済むクラウド版のため、事務所や店舗にはPOSとパソコンだけを置けばいい。伝票レスを加速させ、繁忙期に従業員を販売に専念させられるのもメリット」とPRする。
 さらに、社員の配置の最適化にも貢献。戸枝氏は「1980年代に全盛期だったプログラミング言語『COBOL』で開発されたシステムがまだまだ現役の百貨店もあるが、今や使える人はユーザーにもメーカーにもいない。RITSは、『レガシーシステム』から解放させられる。実際、RITSが稼働した某百貨店は、システムの要員を5〜6人から2人にスリム化。その人材の戦略的かつ効果的な活用に貢献できた」という。
 RITSに次ぐ実績を有するのが、ITFOReCだ。インターネット通販サイトの構築や運用を助けるシステムだが、中でも百貨店にとって心強いのは、ギフトの対応力。届け先や商品、熨斗(のし)、包装などを細かく設定できるため、例えば「届け先ごとに父や母の名前を使い分けたい。それが可能なネット通販サイトで買う」と思う人を呼び込める。百貨店にとっては、「3点を選んで5000円」などのカスタマイズギフトを簡単に設定できるのが便利だ。リアル店舗とのポイントや購買履歴、顧客情報の連携にも実績があり、OMOの実現も後押しする。
 コロナ禍では「3密」を避けたい人々がリアル店舗を避け、ネット通販に流れた。地方百貨店もネット通販を強化し、新客の開拓や既存顧客の囲い込みを狙うが、酒井一平流通・eコマースシステム事業部営業部部長は「どういう方向性か見えていない現状がある」と手厳しい。言い換えると、それを示唆できるのがITFOReCであり、アイティフォーの知見だ。
 現金からクレジットカード、電子マネー、QRコードまで決済の手段が急速に多様化していく中、百貨店業界も受け入れ態勢の整備が欠かせない。アイティフォーのiRITSpayは1台でマルチ決済≠実現し、クレジット業界における国際的なセキュリティ基準である「PCIDSS」も満たす。カスタマイズも可能で、都内の某百貨店はモバイル型を開発。客数が多く、百貨店業界では難しいとされる、婦人服飾雑貨の売場、物産展やギフトセンターなどにも面前決済を広げた。戸枝氏は「POSを幾つも減らせるため、コストの面でもメリットは大きい」と説明する。いずれは、iRITSpayの機能として標準化する意向だ。
 百貨店業界にとって、スマホの保有者への効果的なアプローチも重要だ。スマホアプリ「RI ーppli(リプリ)」は会員証の発行、来店によるポイントの付与、プッシュ通知やクーポンの機能などが搭載されており、RITSやITFOReCと標準で連携。蓄積されたデータを駆使して「CRM」の精度を向上させられる。象徴的な機能として、戸枝氏は来店によるポイントの付与の方法を挙げ、その意図を「特定の売場にQRコードを掲示し、そこで来店のポイントを付けられる。店内でのスタンプラリーも可能。家電量販店に多い専用の端末を操作してポイントが貯まる方法だと、そこだけ立ち寄って帰ってしまう」と明かす。

iRITSpay導入前後の様子

ブロックチェーンで地方創生を支える

  「地方百貨店に寄り添う形で、大手の都市型百貨店並みのデジタル化や情報武装を、パッケージでローコストに支援していきたい」。大枝氏は意気込む。アイティフォーには地方銀行、地方百貨店、地方自治体をブロックチェーン≠ナ結び付け、地方創生を支える―という構想もある。地方銀行の大半、100以上の地方公共団体にシステムを供給する同社だからこそ担える役割だ。地方百貨店がその輪に入れば、有形無形の恩恵が得られる。ウィンウィンの関係を築けるベンダーだ。