キャッシュレス決済ソリューション

【導入事例】琉球銀行様・飛騨信用組合様地域金融機関は、キャッシュレス化にどう取り組み、
地域振興にどう貢献すべきか

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キャッシュレス座談会 〜月刊消費者信用2019年4月号より〜

<座談会出席者>
  • 平岡 孝 氏 :琉球銀行 営業統括部 ペイメント事業推進室 部長兼室長
  • 高原信人 氏 :飛騨信用組合 経営企画部 ペイメント事業課 課長代理
  • 小川天平 氏 :アイティフォー 執行役員 フィナンシャルシステム事業部 副事業部長・西日本事業所所長
  • 相澤明則 氏 :アイティフォー 決済ビジネス部 部長

多機能で、高度なセキュリティを実現する決済ソリューションが決め手に

 異業種が参入し、キャッシュレス化が急速に加速するなか、金融機関はどのような戦略を打ち出すべきなのだろうか。その一つの答えともいえるのが、ユニークなビジネスモデルで、着実にキャッシュレス化を推進している琉球銀行と飛騨信用組合の取組みだろう。二つの金融機関に共通するのは、アイティフォーのマルチ決済端末「iRITSpay(アイ・リッツペイ)決済ターミナル」を採用している点だ。総合的なキャッシュレス決済ソリューションを展開するアイティフォーを交えつつ、琉球銀行と飛騨信組の取組みを聞いてみよう。

キャッシュレス化で地域経済を活性化

――琉球銀行はVisaとマスターカードのライセンスを取得、2017年1月に、クレジットカードのアクワイアリングを開始しました。なぜ、銀行自身でアクワイアリングを手がけようと考えたのですか。

平岡 二つの理由があります、第一は、新たな収益源の確保です。マイナス金利下で資金収支が悪化、加えて県外の地銀や流通系の銀行が県内に進出したことで競争が厳しくなり、さらに利鞘が縮小するという状況のなかで、アクワイアリングによる役務収益に着目しました。沖縄県はインバウンド消費が増加していますが、ホテルなどの建設資金を融資して収益を得るというスタイルだけでなく、観光収益からダイレクトに収益を得るというアプローチもあると考えました。
 第二は地域への貢献です。沖縄県は観光資源も豊富で、インバウンドは増えているのですが、キャッシュレス対応が不十分だといわれていました。キャッシュレス化を推進し、地元経済に貢献するのは、地銀としての使命だと考えたのです。

――前例がほとんどないビジネスモデルを、どのようなフレームワークで実現したのですか。

平岡 プロセシングについては、外部のASPシステムを活用することとし、子会社である地方信販のOCSに、ASPシステムへの加盟店の登録から、売上データの入力・集計までの業務を委託することにしました。
 決済端末も必要になりますが、以前から取引のあったアイティフォーに相談したところ、われわれが望むスペックのマルチ決済端末を開発いただけることになりました。地元の加盟店にご提供するからには、何よりも利便性の高いものを用意したかったのです。

小川 当時、われわれは流通業がいずれICカード対応、すなわちEMV化を迫られるであろうと考え、POSレジと連動するICカード対応端末の開発を検討していたところでした。そこに、琉球銀行様からマルチ端末を探しているというお話が入り、いろいろなご要望をうかがいながら開発に取り組んだ結果、ハイスペックのマルチ決済端末ができあがったのです。

飛騨信組は琉球銀行とタイアップ

――飛騨信組はQRコードを用いた電子地域通貨「さるぼぼコイン」で有名ですが、それとは別に、「カード加盟店サービス」と称して、クレジットカードなどの加盟店開拓をしていますね。その理由を教えてください。

高原 協同組織金融機関は営業エリアが限られていますから、地域が人口減で衰退してしまうと、信組も衰退してしまいかねません。カード加盟店サービスに取り組んだのは、地域の課題と信組としての経営課題の両方を解決できると考えたからです。
 地域の課題は二つあります。まず、クレジットカードや電子マネーなどの決済インフラが整っていないことです。せっかく海外や国内からたくさんの観光客の方をお迎えしているにもかかわらず、「消費したかったのに、消費できなかった」という声が寄せられます。なぜなら、初期コストや決済手数料率が高く、域内事業者がキャッシュレス決済を導入しにくかったからです。琉球銀行と当組合が業務提携をすることで、域内事業者が求める決済手段を提供できるようになりました。私たちが加盟店業務を手がけることがこの課題を解決し、地域活性化に繋がるひとつのアプローチであると考えました。
 もう一つは、地域内の資金が地域外へ流出していることです。キャッシュレス決済を導入している事業者はいるのですが、そのアクワイアリングをしているのは地域外の企業であり、加盟店手数料が地域外に流出しています。その点、地元の金融機関が加盟店業務を行うことで、消費から生まれた収益を地域内で還流させることができ、地産地消を行うことで地域の活力を担保する一助になればと考えました。
 一方、信組としての経営課題は、第一に、マイナス金利下の情勢において利鞘が縮小するなかで、新たな収益源を確保することです。第二に、縮小傾向のマーケットにおいても取引機会の創出を図ることです。今まで取り扱っていなかったキャッシュレス決済手段を提供することで、新規事業者との取引開始や既存取引先との深耕を図る顧客接点戦略となり得ます。また、事業者の販売機会損失を防止し、取引先の売上拡大に貢献することにも繋がります。
 ただ、われわれがキャッシュレス化を推進するには、いかに効率的な業務運営体制を築くかが課題でした。その課題を、琉球銀行の代理店という形でプロセシングなどのリソースを共用させていただくことで解消し、カード加盟店サービスが実現したのです。

飛騨信組流のオープン・イノベーション

―――それもユニークなビジネスモデルですね。

高原 飛騨信組では、自分たちでできることはもちろん自前で取り組みますが、できないことは他と積極的に連携していこうという考え方が基本にあります。外部と連携することで、不可能を可能にしていこうということですが、われわれはこれを飛騨信組流の「オープン・イノベーション」と考えています。
 琉球銀行を通じて、われわれもアイティフォーのアイ・リッツペイ端末やその先にあるクラウドセンターの機能を活用していますが、それだけでなく加盟店向けのコールセンター業務も委託しており、アイティフォーのリソースをフルに活用させていただいています。
 半面、加盟店開拓のための営業活動には、われわれのリソースをしっかりと注ぎます。

―――飛騨信組と琉球銀行が業務提携したきっかけはどういうものだったのですか。

平岡 飛騨信組から直接ご相談を受けたのが始まりです。当行と飛騨信組はほぼ同時期からキャッシュレス化を推進しなければいけないという問題意識を抱いていたのではないかと思います。飛騨信組はすでに電子地域通貨である「さるぼぼコイン」の発行を計画されていましたから。ただ、それとは別のアプローチも必要と考えらえたのではないでしょうか。

―――カード加盟店サービスと「さるぼぼコイン」は同じキャッシュレス事業ですが、位置づけはどう違うのでしょうか。

高原 「さるぼぼコイン」は17年12月に生まれました。
 地元の経営者は高齢者が多く、複雑な端末操作を嫌いますし、イニシャルコストもかけたがりません。そこで、静的QRコードを使用したMPM(加盟店提示方式)の前払支払手段の決済スキームを考案しました。19年2月時点で約900の店舗に導入いただいており、累計5億6000万円の取扱高があります。この4月からは市税を支払えるようにもなる予定です。
 ただ、さるぼぼコインそのものは、地元住民が域内で消費する地産地消に適したものなので、すべてのキャッシュレスニーズに応えきれない部分があります。地域外から来た購入者には別の決済手段が必要ですし、地元の購入者の場合でも顧客によって適した決済手段は異なるでしょう。われわれとしても、複数の決済手段を一度に提案できたほうが営業の効率が高まります。そこで、カード加盟店サービスも行うことにしたのです。

地元加盟店の機会損失を防ぐ

―――沖縄にしても飛騨高山にしても、インバウンド消費が増加している地域ですね。それだけに、地元の金融機関がキャッシュレスを推進する必然性があったのでしょうか。

平岡 大手のアクワイアラーが加盟店開拓するといっても、離島のお店を開拓するようなことはありませんでした。ところが、いまや海外からの観光客も離島にどんどん足を伸ばします。SNSで情報共有しているので、思わぬところに外国人旅行客が殺到したりする。ところがカードが一切使えない。そんな状況を打破する必要性を強く感じました。

高原 国内・海外問わず旅行客が増えています。17年度のデータですが、高山市内における国内外からの旅行客は年間460万人、消費額は940億円に上ります。これまでは売上高の一部を当組合の預金口座に預けていただき、運用することで一定の収益を上げていましたが、それだけの消費があるのであれば、そこから得られる決済手数料が大きな収益源になると思ったのです。

平岡 飛騨信組には何度もおじゃましましたが、古風で日本的な街並みなのに、驚くほど多くの外国人観光客が歩いているわけです。でも、カードが使えない店が多い。夜食事をしながら、店のオーナーになぜカードを使えるようにしないのかと聞くと、「外国人は酒を飲まないから」といった答えが返ってくる。カードが使えないから飲みに来ないという発想がないわけです。沖縄の離島も同じ感覚です。

高原 ものすごい機会損失が生まれているわけですね。キャッシュレス決済を導入すればもっと売上が増えるはずなのに、外国人が現金でちょっと買い物をしてくれるだけで満足してしまっている。そこに気づいていただけるよう、地元金融機関が訴えていく必要性を感じています。

取扱説明書が要らない簡便な操作性を実現

―――アイ・リッツペイ端末を導入した加盟店の評価はいかがでしょう。多機能だとかえって使い方が複雑でわかりにくいといった声はないですか。

平岡 当行はクレジットカード、電子マネー、アリペイ、ウィチャットペイに対応していますが、多機能性に対する評価は高いですし、非常に使い勝手が良いという評判です。

小川 アイ・リッツペイ端末は、直感的に操作可能で、非常にわかりやすい加盟店インターフェースを実現できたと考えています。その最大の要因は、タッチパネル方式の採用にあります。従来の端末は、ボタンを押すタイプが主流でしたが、加盟店側で誤操作などが発生しやすかったようです。そこで、当社はタッチパネル方式にこだわりました。要はスマートフォンと同じです。どのアイコンをタップすればどういう操作が行われるかがアイコンに表示されますから、次にどうすればよいか見当がつくのです。
 クレジットカードのアイコンをタップすれば、磁気リーダーもICチップリーダーもオン状態になりますから、読み取り方式を毎回選択する必要はありません。電子マネーを選択すれば、次の画面で電子マネーのブランドがすべて表示されますから、そこから選んでタップするだけです。

平岡 加盟店には一応取扱説明書をお配りしていますが、おそらく見ないでも操作できているのではないでしょうか。こちらが説明することもありませんが、それでもちゃんと使っていただいています。

高原 飛騨信組でもアリペイ、ウィチャットペイに対応していますので、汎用性の高さを評価していただく加盟店は多いです。  端末とクラウドセンターの通信は端末に内蔵したSIMで行っていますが、これまでダイヤルアップの通信環境で決済端末を使っていた加盟店からは、オーソリ承認が早くなったと喜んでいただいています。また、お店のどこでも決済できますから、面前決済が可能になり、お客様に不安な思いをさせず、CSが向上したというメリットも感じていただいています。

加盟店のセキュリティ対策もアイ・リッツペイ端末で解決

―――改正割賦販売法が18年6月に施行され、加盟店にはカード情報の非保持化あるいはPCI DSS への準拠、ICカード対応などの不正防止対策が義務付けられました。アイ・リッツペイ端末は、加盟店のセキュリティ対策という点ではどのようなメリットがあるのでしょう。

相澤 IC対応が可能という点はいうまでもないのですが、同時に非保持化も実現できます。端末自体がPCI PTSの認定を取得していますので、端末が強固な耐タンパ性を有しており、端末からカード情報が盗まれることはありません。端末で読み取った決済情報はすべて暗号化したうえでアイ・リッツペイ端末のクラウドセンターに送られますから、加盟店はいわゆる「外回り方式」で非保持化が可能です。
 PCI DSSに準拠したクラウドセンターでカード番号等が復号され、決済電文が生成される仕組みです。

平岡 アイ・リッツペイ端末を採用してアクワイアリングを始めましたから、改正割賦販売法への対応は最初からできていると認識しています。当行と加盟店契約を締結していただいた加盟店は、すでにセキュリティ対策が完了しているということです。
 逆に、他社と加盟店契約をしているところから、改正割賦販売法対応をどうすればよいかご相談をいただく機会が増えましたね。当行の加盟店基盤を拡大する絶好の機会だと捉えています

高原 安心して地元の事業者に提案できますね。

POSと決済端末の両方のノウハウをもつ強み

―――アイティフォーとしては、今後端末の機能拡充などにどのように取り組んでいく計画ですか。

相澤 今年1月には国内の主要QRコード決済対応を開始しました。そしてこの4月にはアイ・リッツペイ端末の新製品を発表する予定です(画像)。
 現在、カード事業者、国内QR事業者、決済ゲートウェイを提供されるネットワーク事業者、また、POSベンダー、発券機ベンダーなど、数々の企業様とアライアンスのお話や意見交換を行いながら、機能強化に取り組んでいます。
 また、当社は長年、金融機関様向けソリューション以外に、小売業向け基幹システムなど多数の流通業向け製品もご提供しています。POSシステムでは、どういったフローにすれば最も効率的な処理になるかなど、ユーザー様と直接会話しながら日々機能を更改し続けています。そのシステム開発で培ったノウハウをマルチ決済端末へも踏襲していますので、より利便性が高く、操作性に優れた端末に仕上がっています。
 この度、政府がキャッシュレス化を推進する目的の一つが、データの利活用による生産性の向上にあることを踏まえますと、今後のマルチ決済端末のさらなる有効活用の手立ては、決済トランザクションデータの収集と活用のご提案ではないでしょうか。さらには顧客データ収集におけるモバイルウォレットアプリなどの企画も強化していきたいと考えています。
 日々新しい取組みが生まれるこの決済事業の対応に終わりはありません。マルチ決済端末だけにとどまらず、さまざまな当社ソリューションをご採用いただけるよう、皆様とともに進化し続けてまいります。

マルチ決済端末「iRITSpay」は、クレジットカードの各国際ブランド(Visa、Mastercard、JCB、Discover、AMEX、Diners Club、銀聯)に対応。読取り方式、磁気、接触IC、非接触IC(NFC)のすべてをカバー(NFCは4月以降に対応予定)。電子マネーは交通系(Suicaなど9種類)とWAON、nanaco、楽天Edy、QUICPay、iDに対応済み。QRコード決済は中国のAlipay、WeChat Payに対応。日本のQRコード決済も、LINE Pay、PayPay、d払い、楽天ペイの4 種に1月より対応開始(今後も順次対応予定)。クラウド型の決済システムで、各種決済サービスを処理するための電文はiRITSpayのクラウドセンターで生成される。新しい決済サービスに対応する際は、クラウドセンターにアプリケーションを追加すればよく、個々の端末の改修を必要としない。きわめて拡張性の高い決済システムである。


※当記事は、株式会社金財エージエンシー社の許諾を得て転載しています。
掲載日:2019年4月1日