お客様からの心ない言葉に、ただ耐えるしかない──そんなオペレーターの苦悩を、あなたの会社ではどう受け止めていますか?

カスタマーハラスメントは、もはや個人の努力で乗り越えられる問題ではありません。 現場のオペレーターを守るために、コンタクトセンター事業者はどのような取り組みを行うと良いのでしょうか。
前々回のコラムでは、東京都が定めた「カスタマー・ハラスメント防止条例」を紹介しました。 実はこの条例、従業員を守るのに有効とされる、事業者の具体的な行動にも踏み込んでいます。 また、厚生労働省も「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表し、企業がどのように対応すると良いかの指針を示しています。

本記事では、コンタクトセンター事業者の皆様がカスタマーハラスメントにどのように向き合い、どのような対策を講じると良いかについて、わかりやすく解説します。

「お客様からの迷惑行為」に国はどう向き合っているのか

厚生労働省の指針から読み取れる対策のヒント

厚生労働省が策定した指針のひとつに、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和2年厚生労働省告示第5号)があります。
この指針は、いわゆるパワーハラスメントの防止に関する基本的な考え方と、事業主が講ずべき措置を示したものです。
注目すべきは、顧客を含む社外関係者からのハラスメントや迷惑行為についても、事業主が適切に対応することが望ましいと明記されている点です。

 事業主は、パワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上の配慮として、
 例えば、⑴及び⑵の取組を行うことが望ましい。 また、⑶のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。

取組内容 取組の具体例
⑴相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 ・相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知する

・相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにする
⑵被害者への配慮のための取組 ・被害者のメンタルヘルス不調への相談対応

・著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組を行う
⑶他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組 ・マニュアルの作成

・研修の実施

顧客等からの著しい迷惑行為」というのが、まさにカスタマーハラスメントを指しています。

カスタマーハラスメント対策のための実践的チェックリスト

厚生労働省が作成している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」には、上記を踏まえて事業者が実践すべき具体的な対応策をチェックリストとしてまとめたものがあります。
これを参考にすることで、自社の現状を見直し、必要な対策を具体的に検討することができます。ぜひ、自社の取り組みに役立ててください。

③必要な体制の整備、対応マニュアル等の作成
顧客等からのハラスメントについて、対応策の検討を行う部署・委員会はあるか。
どのような行為を顧客等からのハラスメントとして整理するのか、その基準を示し、従業員に周知・啓発、教育を行っているか。
監視カメラの設置、警備担当者の配置等、保安体制は整備されているか。
最寄りの警察等の連絡先は周知されているか。
顧客等からのハラスメント対応マニュアルを作成しているか。
顧客等からのハラスメント対応マニュアルに沿った従業員の教育訓練を行っているか。
事案発生時の社内報告・連絡・相談システムが確立され、周知しているか。

東京都が示す、カスタマーハラスメント対策への関わり方

東京都では「カスタマー・ハラスメント防止条例」の第14条において、事業者に推奨される具体的な措置が明記されており、対応の際のポイントや具体例が示されています。 記載内容はすべての事業者に通じるものですので、コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメントに対しても、参考にしていただけます。

(事業者による措置等)
第14条 事業者は、顧客等からのカスタマー・ハラスメントを防止するための措置として、指針に基づき、必要な体制の整備、カスタマー・ハラスメントを受けた
就業者への配慮、カスタマー・ハラスメント防止のための手引の作成その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 就業者は、事業者が前項に規定するカスタマー・ハラスメント防止のための手引を作成したときは、当該手引を遵守するよう努めなければならない。

就業者への配慮
基本指針の明確化
土台の整備
従業員への周知
概要 事業者による措置
基本指針の明確化 ・カスタマーハラスメント対策の明確化

・カスタマーハラスメントを行ってはならない旨の明確化

・再発防止に向けた取組
土台の整備 ・相談窓口の設置

・適切な相談対応の実施

・現場での初期対応の方法や手順の作成

・内部手続の方法や手順の作成
従業員への周知 ・相談者のプライバシー保護に必要な措置を講じて周知

・相談を理由とした不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め周知

・就業者への教育・研修等
就業者への配慮 ・事実関係の正確な確認と事案への対応

・就業者の安全の確保

・就業者の精神面及び身体面への配慮

まとめ:コンタクトセンターにおけるカスタマーハラスメントに対する対応を
次のステップへ進めるために

“お客様第一”の名のもとに、現場の声が置き去りにされていないでしょうか。
本当にお客様のためを思うなら、まずはコンタクトセンターに従事するオペレーターが笑顔で働ける環境を整えることが大切です。
働く人を守ることは、結果として企業への信頼を育てることにもつながります。
今回は、厚生労働省と東京都を事例としてご紹介しましたが、他にも参考になる取り組みは数多く存在します。

今こそ、オペレーターが安心して働ける職場づくりに向けて、一歩を踏み出してみませんか?