AIはコンタクトセンターを無人化するのか?
~「人とAIの協働」を成功させる段階的アプローチ~
生成AIの進化により、コンタクトセンターのAI活用は、オペレーター支援や定型対応の自動化から、対話を通じて手続きまで担う「自律型AIエージェント」へと進みつつあります。重要なのは、人をなくすことではなく、AIと人の役割を適切に分担し、業務効率と顧客体験(CX)をともに高めることです。本コラムでは、AIが力を発揮する領域、人が担うべき対応、段階的な導入アプローチと成功のポイントを解説します。

<目次>
1. はじめに:AIはコンタクトセンターを無人化するのか?
近年、生成AIや対話型AIエージェントの進化により、コンタクトセンターにおけるAI活用は、将来の構想ではなく、現実的な選択肢になりつつあります。「AIを活用すれば、コンタクトセンターは無人化できるのか」と考える方もいるかもしれません。結論から言えば、AI活用の目的は、人による応対をすべてなくすことではありません。AIに任せるべき業務と、人が担うべき業務を適切に分担し、業務効率と顧客体験(CX)の両方を高めることが重要です。
実際、コンタクトセンターにおけるAI活用は広がっています。デロイト トーマツ グループの調査では、日本企業のコンタクトセンターにおけるAI導入率は約50%に達したとされています。一方、ナイスジャパンの調査では、コールセンター業務で生成AIを利用している企業は17.2%であるものの、導入効果として「コスト削減」を挙げた企業は67.4%にのぼりました。
AI活用は確実に進んでいますが、現時点で多くの企業が取り組んでいるのは、応対内容の要約、ナレッジ検索、回答案の提示、FAQへの自動応答といった、オペレーター支援や定型的な問い合わせへの対応です。つまり、多くの企業はすでに、AIでオペレーターを支援する段階、あるいは定型的な問い合わせの自己解決を促す段階まで進んでいます。
次に求められるのは、AIが顧客との対話を通じて状況を理解し、CRMや基幹システムと連携しながら、予約変更や各種手続きまでを担う「自律型AIエージェント」の活用です。AIがすべてを代替するのではなく、定型的な対応や処理はAIへ、人の判断や共感が必要な対応はオペレーターへ。この役割分担を高度化していくことが、これからのコンタクトセンターに求められます。
本コラムでは、「人を減らす」ためではなく、「人にしかできない対応」に集中するためのAI活用の考え方と、「オペレーター支援」から「定型対応の自動化」、そして「自律型AIエージェント」へと進む実践的なアプローチを解説します。
※参考資料
デロイト トーマツ グループ「デロイト トーマツ調査、日本企業のコンタクトセンター AI導入率が約50%に伸びるも、成果創出には苦戦」(2023年8月8日)
https://digitalpr.jp/r/74828
IT Leaders「コールセンター業務に生成AIを使う企業は17.2%、導入効果は『コスト削減』が67.4%─ナイスジャパン調査」(2024年8月7日)
https://it.impress.co.jp/articles/-/26678
2. 業務の仕分け:AIが力を発揮する領域と、人が担うべき領域
コンタクトセンター業務には、一定のルールや情報に基づいて進められる業務が数多くあります。AI活用を成功させるには、まずAIの得意分野と、人が担うべき領域を整理することが重要です。
1)AIが力を発揮しやすい領域
AIは、膨大な情報の検索や要約、定型的な問い合わせへの応答、データ分析などを得意とします。
たとえば、次のような業務です。
- 会話内容に応じたマニュアルやFAQの検索、回答案の提示
- 応対後の要約や記録作成、問い合わせ内容の分類
- チャットボットやボイスボットによる定型的な問い合わせへの自動応答
- 応対履歴やVOC(顧客の声)の分析
- 問い合わせ傾向や顧客のつまずきポイントの可視化
こうした業務をAIが支援することで、オペレーターは検索や記録作成などに費やしていた時間を減らし、顧客との対話そのものに集中しやすくなります。
2)人が担うべき領域
一方で、すべての問い合わせをAIだけで完結させることが最適とは限りません。強い不満や不安を抱えるお客様への対応、個別事情を踏まえた判断、規定外の例外対応などでは、人による理解、共感、臨機応変な判断が欠かせません。
たとえば、次のような対応は、引き続き人の価値が大きい領域です。
- クレームやカスタマーハラスメントを含む、感情的な配慮が必要な対応
- 複数の事情を踏まえた個別相談
- 規定外の例外判断や関係部署との調整
- VIP顧客などへのきめ細かな対応
- 長期的な関係構築が求められる顧客対応
AIの真の役割は、人の対応をなくすことではありません。人が本来注力すべき、高度な判断や共感が必要な対応に集中できる環境をつくることにあります。

3. 実践アプローチ:AI活用は3つの段階で進める
AI活用を考える際、最初から顧客対応の完全自動化を目指す必要はありません。自社の業務や顧客特性に合った領域から着実に取り組み、段階的に活用範囲を広げていくことが成功の鍵です。
STEP 1:オペレーターを支えるAI活用
まず取り組みやすいのが、オペレーターの業務を支援するAI活用です。応対内容の要約、記録作成、ナレッジ検索、回答案の提示などをAIが支援することで、後処理業務や検索にかかる時間を削減できます。この段階は、顧客対応そのものをAIに任せるわけではないため、比較的リスクを抑えながら始めやすく、効果も可視化しやすい領域です。
STEP 2:定型的な問い合わせを自動化するAI活用
次の段階は、チャットボットやボイスボットを活用し、定型的な問い合わせの自己解決を促すことです。たとえば、営業時間の案内、配送状況の確認、各種手続きの案内、本人確認後の簡易照会など、一定のルールで対応できる問い合わせを自動化します。この段階では、顧客が24時間365日必要な情報にアクセスできるようになるほか、オペレーターが対応すべき呼量を抑え、あふれ呼の削減にもつながります。
すでに多くの企業が、STEP 1のオペレーター支援、あるいはSTEP 2の定型対応の自動化に取り組み始めています。
STEP 3:対話から手続きまで担う自律型AIエージェント
これから重要になるのが、AIが単に質問へ回答するだけでなく、顧客との対話を通じて状況を理解し、必要な情報を確認した上で、CRMや基幹システムと連携し、手続きまでを完結させる段階です。たとえば、予約の変更、契約内容の確認や変更、住所変更、各種申請の受付などを、AIが対話を通じて進め、必要な処理を実行します。
この段階で重要なのは、AIが自律的に処理を進めることだけではありません。AIが対応しきれないと判断した場合には、会話の履歴や顧客の状況を保持したまま、適切なオペレーターや担当部署へ引き継ぐことが不可欠です。
これからのコンタクトセンターでは、「AIが答える」だけでなく、「AIが対話を通じて業務を進め、人が必要な場面では適切に引き継ぐ」仕組みを実現できるかが、顧客体験と業務効率の両面で重要になります。

4. 導入前に確認したい、AI活用を成功に導く3つのポイント
AI活用の成果は、導入するツールやシステムの機能だけで決まるものではありません。導入前に、業務、データ、運用の設計を十分に行うことが重要です。
1)ナレッジや業務ルールが整理され、最新の状態に保たれているか
AIは、参照するナレッジや設定された業務ルールに基づいて回答・処理を行います。 マニュアルやFAQが古いままになっていたり、同じ内容の情報が複数の場所に存在していたりすると、AIの回答品質にも影響します。 導入前には、ナレッジの内容、更新ルール、管理責任者を整理し、AIが参照すべき情報を明確にすることが必要です。
2)AIから有人対応へ、適切に引き継げる設計になっているか
お客様がAIとの対話で解決できなかった場合、同じ説明を繰り返さなければならない状態は大きなストレスになります。AIが対応しきれないと判断した時点で、会話履歴や確認済みの情報、問い合わせの要点を保持したまま、適切なオペレーターや担当部署へ引き継げる設計が重要です。AIと人の役割分担を考える際は、「どこまでAIが対応するか」だけでなく、「どのような条件で、誰に引き継ぐか」までをあらかじめ設計しておく必要があります。
3)導入後も品質を確認し、改善を続けられる体制があるか
AIは導入して終わりではありません。 回答内容の正確性、自己解決率、有人対応への引継ぎ率、顧客の評価などを継続的に確認し、ナレッジ、対話設計、業務ルールを見直していくことが必要です。 AIの活用範囲を広げるほど、業務部門、コンタクトセンター、システム部門が連携し、継続的に改善できる体制が重要になります。
5. まとめ:これからのコンタクトセンターは、AIと人が協働する場へ
「AI活用の成果を、応対時間(AHT)や人件費の削減だけで測るべきではありません。お客様が迷わず解決にたどり着けたか。必要なときに、適切な担当者へスムーズにつながったか。オペレーターが、人の判断や共感が求められる対応に十分な時間を使えたか。こうした視点を含めて評価することが重要です。
AIに任せられる業務はAIへ。人にしかできない対応は人へ。この役割分担を適切に設計することが、効率性と顧客体験を両立する、これからのコンタクトセンターづくりにつながります。
多くの企業が既に、オペレーター支援や定型対応の自動化に取り組んでいます。次に問われるのは、AIが対話から手続きまでを担い、必要に応じて人へ適切に引き継ぐ「自律型AIエージェント」を、どのように実現するかです。

※【ご案内】
STEP 3「自律型AIエージェント」の実現を支える対話型AIプラットフォーム「Cognigy」
対話から手続きまでを担う自律型AIエージェントを実現するためには、単に質問へ回答するだけのチャットボットやボイスボットでは不十分です。顧客との対話を理解し、必要な情報を確認し、CRMや基幹システムと連携して処理を進め、必要に応じて有人対応へ引き継ぐ仕組みが求められます。
アイティフォーが提供する対話型AIプラットフォーム「Cognigy(コグニジー)」は、こうしたAI活用を支えるプラットフォームです。Cognigyは、電話などの音声チャネルと、WebチャットやLINEなどのテキストチャネルを横断して、顧客との対話を設計・自動化できます。
Cognigyで実現できること
- 音声とテキストを横断した対話の自動化 電話、Webチャット、LINEなど、複数のチャネルで一貫した顧客対応を設計できます。
- 文脈を踏まえた自然な対話 顧客の発話内容や対話の流れを踏まえ、必要な情報を確認しながら応対を進めます。
- CRMや社内システムとの連携 CRMや基幹システムなどと連携し、単なる案内にとどまらず、確認、変更、申請などの業務処理までを自動化できます。
- スムーズな有人対応への引き継ぎ AIで解決できない場合には、会話履歴や顧客の状況を保持したまま、オペレーターへ引き継ぐことができます。
Cognigyは、オペレーター支援や定型対応の自動化にとどまらず、対話から業務処理までを担う自律型AIエージェントの実現を支援します。AIと人の理想的な役割分担を設計し、コンタクトセンターの価値を高めたいとお考えの企業様は、ぜひご相談ください。
▼ Cognigyの詳細はこちら
公開日:2026年07月08日
最終更新日:2026年07月08日
監修:株式会社アイティフォー CTIシステム事業部
コンタクトセンター/生成AI/AIエージェント/CX(顧客体験)/業務効率化/Cognigy