通話者が笑顔のイラスト

金融機関のコンタクトセンターで督促業務を行う際は、オペレーター(督促担当者)への暴言や威圧的な言動など、カスタマーハラスメント(カスハラ)への備えが必要です。返済状況を確認する電話で侮辱的な発言が続き、どの段階で管理者に引き継ぐべきか迷う。こうした場面を想定して、コンタクトセンター全体で共有できる対応ルールを整えておくことが求められます。

大切なのは、お客さまの返済相談や正当な苦情を受け止めながら、担当者が暴言や威圧を一人で抱え込まない体制を整えることです。本記事では、主にローン返済に関する電話督促を対象に、コンタクトセンターのカスハラ対策として、暴言への対応、管理者への引継ぎと、コンタクトセンターシステムなどを活用した通話記録の残し方を解説します。

※以下の会話・記録例は、公開資料の考え方を踏まえて作成した架空の例です。引継ぎ項目やシステム運用は提案例であり、各金融機関の規程・権限に合わせて具体化することを想定しています。

1. 督促業務でのカスハラと正当な相談・苦情を区別する

督促の電話で、「すでに振り込んだ」「返済日の相談をしていた」「何度も電話が来る」と指摘された場合、まず確認すべきなのは、入金状況や過去の応対履歴です。失業などを理由とした返済相談や、請求・連絡方法への異議そのものを、カスタマーハラスメント(カスハラ)と捉えることは適切ではありません。

厚生労働省は、カスハラに該当するかどうかを、言動の内容や方法、頻度、経緯などから総合的に判断する考え方を示しています。金融機関側の説明不足や不適切な対応が背景にないかも確認が必要です。しかし、仮に金融機関側に落ち度があったとしても、担当者を威圧するような不相当な言動まで許容されるわけではありません。通話が長い、声が大きいという一つの要素だけで決め付けず、要求を実現する手段や態様が社会通念上妥当かという視点で判断します。[1]

一方、相談内容に確認すべき点があっても、担当者への脅しや人格を否定する言動には、別途対処が必要です。全国銀行協会が2025年7月に策定した基本方針でも、脅迫・侮辱・暴言などを対象に挙げ、対応の打切りや警察・弁護士等への相談を含む対応を示しています。[2]

例えば、「入金済みなのに電話が来た」という申し出については事実確認を進め、同時に、担当者への侮辱には中止を求める。この二つを並行して扱うことが、督促業務での基本になります。

事実確認と侮辱への中止を並行して扱うイラスト

2. 暴言を受けたときの伝え方と管理者・SVへの引継ぎ

コンタクトセンターでは、担当者がカスハラだと確信できなくても、対応に困った時点で管理者やスーパーバイザー(SV)に支援を求められるルールを設けます。厚生労働省のマニュアルも、現場で確認した情報を責任者等に共有し、対応方針の指示を受ける流れを示しています。[3]

侮辱的な発言の中止を求める際は、相談を受ける姿勢と、控えてほしい行為を具体的に伝えます。

「ご返済についてのお話は伺いますが、担当者を侮辱する発言はお控えください。」

それでも続く場合は、組織で定めた基準に沿って管理者に引き継ぎ、必要に応じて通話を終了します。終了時は、その電話を終えることと、返済に関する今後の対応を区別して説明します。

「先ほどお願いしましたが、同様の発言が続いているため、本日のお電話は終了いたします。お客さまのお申し出の件については担当部署で確認いたしますが、〇月〇日のご返済については、引き続き指定口座へのお振り込みをお願いいたします。」

こうした案内をするには、終了後に誰が連絡するのかまで、あらかじめ決めておく必要があります。管理者が不在の場合の代理責任者や、担当者の判断で通話を終了できる条件、終了後の報告先も明確にします。

危害を加える予告など、切迫した危険がある場合は、安全確保と緊急連絡を優先します。通常の注意・引継ぎの手順を順番どおり終えることにこだわらず、状況に応じて警察への通報等につなげます。[2][3]

管理者やSVに引き継ぐイラスト

3. 管理者には返済案件の状態と問題となる言動を伝える

「お客さまが怒っています」という報告だけでは、管理者は、入金確認が必要なのか、返済条件の相談なのか、担当者の保護を優先すべき状況なのかを判断しにくくなります。引継ぎでは、本来の相談内容と問題となる言動を、短く整理して伝えます。

引継ぎ項目 伝える内容の例
案件の状態 対象の契約・返済期日、入金確認の状況、お客さまの申告、過去の相談や約束事項
問題となる言動 実際の発言、発言した時点、繰り返しの状況、危害の予告の有無
すでに行った対応 説明や確認の内容、中止を求めた言葉、その後の相手の反応
判断してほしいこと 担当交代、通話継続・終了、返済相談の専門部署への取次ぎなど
確認できる記録 通話日時、案件番号、録音を特定できる番号、重要な発言の位置

例えば、通話中の引継ぎは、次のように要点を伝えます。

「住宅ローンの返済確認で発信しています。お客さまは『昨日振り込んだ』と申告されていますが、入金は未確認です。確認のための保留をお願いしたところ、担当者への侮辱が続き、中止をお願いしても収まっていません。通話への介入をお願いします。」

この段階では、お客さまの申告と、システム等で確認できた事実を分けることが重要です。過去のメモに返済予定があっても、それがお客さまの希望なのか、金融機関として承認した内容なのかを確認します。

引継ぎメモのイメージイラスト

4. カスハラ対応の通話記録に残すべき内容

金融庁の「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」では、苦情等の内容と対処結果を正確に記録・保存し、関係者の情報共有や業務改善に活用する態勢が着眼点とされています。[4]

コンタクトセンターで担当者が交代する際、「暴言あり」「対応困難」といった短いメモだけでは、次の担当者が経緯を確認できません。相手の発言に加えて、その前に担当者が何を説明したか、中止を求めた後にどう変化したか、どの事項が未確認のまま残っているかを記録します。

録音と応対履歴を案件番号などでひも付けておくと、管理者は問題となる発言の前後に戻り、双方のやり取りを確認できます。記録例としては、「入金済みとの申告を受けたが確認未了。確認のための保留を申し出た後、担当者への侮辱が継続。中止要請後も続いたため、管理者に引継ぎ」と残す方法があります。

音声認識やAI要約を使う場合は、返済期日、金額、約束の有無などを確認してから確定します。「10日に支払う」と「10日なら支払えるかもしれない」では、返済見込みの確実さが異なります。特に督促業務における記録は、債務承認など法的な証拠としての意味を持つこともあるため、業務判断に関わる箇所は、原音や担当者の確認を通じて正確に残す運用が必要です。

通話内容から特定の個人を識別できる場合、その録音は個人情報に該当します。あらかじめプライバシーポリシー等で公表している利用目的に「防犯・対応記録」「品質向上」などに加え、カスハラ対応に関連する目的が含まれているか確認します。そのうえで、閲覧権限や保存・削除のルールを整え、必要な担当者が必要な範囲で確認できるようにします。[5]

録音と応対履歴のイメージイラスト

5. コンタクトセンターのカスハラ対策にITシステムを活用する

コンタクトセンターのカスハラ対策にITシステムや音声認識サービス、債権管理システム、さらには最近ではAIを活用することが考えられますが、その際は、実際の督促の流れに沿って、どの場面を支援するかを整理します。導入・運用時には、次の点を確認すると具体的な検討につながります。

まず、督促の発信通話が録音・モニタリングの対象になっているかを確認します。支店とコンタクトセンターで電話環境が異なる場合は、それぞれの対象範囲を確認する必要があります。担当者が支援を求める操作と、管理者がその通知に気付いて対応する手順も、セットで決めます。

次に、通話中の文字起こしやアラートを、管理者が状況を把握する手掛かりとして利用します。特定の言葉が検出された場合も、誰の発言か、どのような経緯で発言されたかを確認して判断します。アラートだけでカスハラと確定したり、自動的に返済相談を打ち切ったりする運用にはしません。

さらに、通話終了後の方針を、次回の発信担当者にも伝わる形で残します。例えば、管理者が確認中なのに、別の担当者が通常の発信リストに沿って再び電話すると、説明の食い違いや重複連絡につながるおそれがあります。連絡を保留する場合の権限・期限、再開条件、担当者を決め、発信リストへの反映まで確認しておきます。

ここで区別したいのが、「お客さまとの通話を終了した状態」と「返済に関する案件の対応が完了した状態」です。入金確認や相談への回答が残っている場合は、未処理事項として担当者と期限を設定します。コンタクトセンターシステムと債権管理システムで共有できる項目や更新のタイミングは、システム構成に応じて確認します。

管理者が支援するイラスト

6. 通話後は担当者のケアと対応方法の見直しにつなげる

管理者は、引継ぎ後に担当者の状態を確認し、必要に応じて休憩や担当変更、相談窓口の利用につなげます。事実確認では録音を活用し、本人に同じ経緯を何度も説明させない配慮も必要です。[3]

運用を振り返る際は、通話時間や回収状況に加えて、支援要請から管理者の対応までにかかった時間、次回担当者への引継ぎができていたか、未確認のまま再連絡した案件がなかったかを確認すると、改善点が見えやすくなります。

まずは一つの想定場面を使い、担当者が支援を求めるところから、管理者の介入、記録、次回連絡までを通して確認してみましょう。誰が何を判断するかを具体化することが、担当者を守りながら返済相談を継続するコンタクトセンターの体制づくりにつながります。

チームでケアし、改善するイラスト

7. アイティフォーのコンタクトセンター向けカスハラ対策

アイティフォーは、クラウド型コンタクトセンタープラットフォーム「CXone」と音声テキスト化サービス「Omnis」を連携し、リアルタイムテキスト化、NGワード検出、アラート・手上げ、通話モニタリングなどによる応対支援を提供しています。[6]

金融機関のコンタクトセンターにおけるカスハラ対策や、担当者の負担軽減、管理者による支援体制の整備をご検討の際は、以下をご覧ください。

▼ CXone+Omnisを活用したカスタマーハラスメント対策の詳細はこちら

※参考資料と出典

本文中の番号に対応する参照先です。2026年10月2日時点の公開情報に基づき作成しています。

[1] 厚生労働省 あかるい職場応援団
カスタマーハラスメントとは 別ウィンドウで開く
判断の考え方と正当な申入れとの区別。

[2] 一般社団法人 全国銀行協会
カスタマーハラスメントへの対応に係る基本方針 別ウィンドウで開く
2025年7月17日制定。銀行界の基本方針と対応体制。

[3] 厚生労働省
カスタマーハラスメント対策企業マニュアル 令和8年度改訂版 別ウィンドウで開く
冊子25〜30頁の初期対応・電話対応等、37〜40頁の事実確認・被害者への配慮。会話や運用例は本文独自の提案。

[4] 金融庁
中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針 別ウィンドウで開く
II-3-2-6-2 苦情等対処に関する内部管理態勢の確立、特に(4)顧客への対応と(5)情報共有・業務改善等。

[5] 個人情報保護委員会
通話内容の個人情報該当性と録音に関するQ&A 別ウィンドウで開く
特定の個人を識別できる通話の取扱いと利用目的の通知・公表。権限や保存・削除のルールは運用上の提案。

[6] 株式会社アイティフォー
カスタマーハラスメント対策
CXoneとOmnisの連携による公表機能。債権管理システムとの自動連携を保証する記述ではない。

公開日:2026年10月23日
最終更新日:2026年10月23日
監修:株式会社アイティフォー CTIシステム事業部
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