アイティフォーは、時流の変化を捉えて小売業向け基幹システム「RITS(リッツ)」とECサイト構築パッケージ「ITFOReC(アイティフォレック)」を刷新する。RITSのPOSはスマートフォンを操作するような感覚で使える仕様に変更。働き始めたばかりのアルバイトらシステムに不慣れな従業員でも、すぐになじめるようにする。POSと共通のプログラムで動作する、モバイル型決済端末を用いた「ミニPOS」も開発。催事場や外商の訪問販売などでキャッシュレスの面前決済を支援する。2019年10月に京王百貨店のオリジナルとして供給し、好評を博している端末だ。他の百貨店からの要望が多く、横展開に踏み切る。ITFOReCは、SaaS型のEC構築プラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」に自社開発のアプリを組みんだ独自パッケージとしてリニューアル。機能の拡充とコストや納期の削減という二律背反を実現する。RITSのギフト管理システムはECパッケージへ統合される。新生RITSは来年12月、ECサイト構築パッケージは今年10月に稼働する。

~月刊ストアーズレポート2025年9月号より~

月刊消費者信用2025年9月号表紙

地方百貨店中心に浸透 課題はデザインや操作性

RITSは長く百貨店各社を支えてきた。とりわけ近年は地方百貨店が相次ぎ採用。今春には、ながの東急百貨店で本稼働した。同社は既存のシステムが老朽化しており、複数の候補からRITSを選んだ。

アイティフォーのニュースリリースによれば、ながの東急百貨店の太田誠執行役員経営統括部長は「百貨店向けパッケージとして業界標準機能を備えるRITSに当社の運用を適合させ、お客様の利便性の向上を第一に、業務の効率化とカスタマイズの最小化によるコスト削減を目指した。百貨店向けパッケージを扱うアイティフォーならではの業務に入り込んだ提案に始まり、設計から開発、導入まで細やかな品質管理によって無事稼働を迎えられた。今後のパッケージのバージョンアップにも期待する」と経緯や狙いなどを説明した。

RITSは、ながの東急百貨店を含めて14の百貨店が利用する。交渉中の百貨店もあり、ユーザーの輪は拡大の一途だ。人気の背景には、百貨店業界に根を張り、複雑な商慣行を熟知しているからこその“痒い所に手が届く”仕様、優先順位などに応じた拡張性、優れたコストパフォーマンスなどがある。

RITSは、主に「商品管理システム」、「販売管理システム」、「顧客管理システム」、「クレジットシステム」、「O2Oゲートウェイ」、「前受金管理(友の会)システム」で構成。商品管理システムは、単品からクラス、品番まで対応し、在庫、売上げ、棚卸しといった小売業の基幹業務をリアルタイムで一元管理する。支払いの条件が異なる取引先からの買掛金も一元管理が可能だ。取引先の条件に応じて、仕入れ明細書、支払い案内書などを指定期日内に自動で発行。正確な期日管理で、ビジネスの信頼性を高める。EDI(電子データ交換)の標準仕様である「流通BMS」にも対応。商品の売れ行きをリアルタイムで取引先に伝達し、欠品を防ぐ。

販売管理システムは、店舗会計と財務会計を結ぶ。トランザクション管理では、日々の売上げを現金、金券、クレジットカードといった支払いの方法ごとに取りまとめて会計処理。POSごと、店舗ごとの処理およびデータを基幹システムに結び付ければ、集計業務も短縮できる。

顧客管理システムは、ポイントカードを作成した顧客が、いつ何を購入したか把握できる機能のほか、売場ごとのヘビーユーザーが誰なのかなどを分析できる機能、友の会の会員らから〝前受け〟した金額などがリアルタイムで分かる機能などを備える。

クレジットシステムは、ハウスカードや外商売掛の細かい管理が可能。債権を指定して入金管理ができるため、関東のある百貨店では外商売掛残高が5分の1に削減された。近年は、外商顧客の商品購入状況や支払情報を確認する売掛管理システムとしての利用も多い。

O2Oゲートウェイでは、基幹システムがオフラインの深夜帯でも、インターネット通販サイトの利用者に対するポイントの付与、ポイントを利用しての商品の購入が可能。データは基幹システムがオンライン化した際に統合される。

それぞれは個別に導入できるため、サブシステムの切り替えや保守の更新時などに移行しやすい。中部地方の百貨店は、まずギフトシステムを採用し、基幹システムまで拡張した。少ない予算で始め、利便性を確認してから“次の一手”を判断できるのもメリットだ。

ギフトシステムとECを統合できれば百貨店にも客にもメリットが大きい

ECとギフトシステムを統合できれば、百貨店にも客にもメリットが大きい

業務効率の向上に加えて人手不足の解消にも寄与

ただ、課題も浮かび上がってきた。百貨店各社からは「(操作画面などの)デザインが古い」という声が届き、使用する開発言語の古さからアイティフォー内の技術者も減少。刷新を決めた。流通・eコマースシステム事業部の戸枝靖博氏は「同業他社は、いわゆる『ウェブライク』のPOSを開発してビジネス化しており、対抗していかなければならない。『分かりやすさ』、『文字を大きく』、『シンプルに』を掲げて刷新に向けたプロジェクトを発足させ、来年12月の完了を目指す」と狙いやロードマップを説明する。

いずれも検討の段階だが、「メニューの画面は売上系や返品系、その他系で色分けする」、「売上げを登録する画面は文字を大きくする」、「売上げ決済の画面は確定済み標示エリアと入力可能エリアを色分けする」、「未決処理の画面では『承り』と『商品予約』の違いをボタンの名称の横に補足説明する」、「入金処理の自社クレジットの画面では『債権指定入金』や『債権指定入金(強制)』、『カード指定入金』といった不慣れな人には難解な用語を説明する『INFO』ボタンを設置する」、「入金処理の債権指定入金の画面では、1回払いしかないユーザーは1回分だけ表示する設定を組み込む」、「商品コードの検索を追加する」などが俎上に載る。

これらはアイティフォーがユーザーにヒアリングして抽出。あくまでも百貨店起点、百貨店本位でRITSをブラッシュアップする。「操作がより分かりやすくなれば、スポットワーカーや高齢者らに評価され、人手不足の解消にも役立つのではないか」と戸枝氏は分析する。

商機拡大を後押しする「ミニPOS」も開発中

RITSのPOSと共通のプログラムで動作するミニPOSも開発中だ。導入した京王百貨店では決済における客の手間や待ち時間の減少、売場や外商、テナントの業務効率の改善といった成果を上げており、同業他社からの引き合いが多い。しかし、京王百貨店専用で標準版には対応していない。そこで、新規に開発して供給体制を整える。

ミニPOSには、キャッスル・テクノロジー社が手掛けるAndroid OSを搭載した決済端末「SATURN(サターン)1000F2」を使用。クレジットカードから電子マネー、デビットカード、二次元バーコードまで様々な決済が可能なほか、Android OS用のアプリケーションをインストールすれば、勤怠管理なども可能だ。費用は1台当たり10万円ほどで、据え置き型のPOSと比べて数分の一に過ぎない。あくまでもハードウエアのみの金額差だが、ソフトの分を足しても半分くらいに抑えられる。

ミニPOSの利点は業務効率の改善だけではない。売上げの伸長にもつながる。例えば、催事場の各ショップはキャッシュレス決済を希望する客には専用のPOSへ案内するのが一般的だが、ミニPOSを持って巡回する社員を配備すれば、その場で決済は完了。決済の時間が短縮されれば、売り逃しを防げる。あるいは外商でも、担当者がミニPOSを持って客の家を訪ねれば、その場で決済が可能。帰社後の業務を省き、生産性の向上を促す。

「多くの百貨店は地上階にPOSの台数が少なく、また売場の景観を損なうため目の届かない場所に置き、お客様を待たせがちだ。加えて今年3月でPINバイパスが廃止され、面前決済が必要不可欠となった。買い物の利便性を担保する上で、ミニPOSは有益だ」と戸枝氏。同業他社もPOSの拡販に力を注いでいるが、アイティフォーはPOSと同じプログラムで動作するミニPOSで今後の法改正などへの対応を容易化し、競合を制する。

RITSの刷新とミニPOSの開発は、百貨店各社の心をつかむ。すでに1社が新生RITSの採用を内定し、商談中の百貨店からも「RITSとミニPOSで作業が半分になる」と好感触だ。

「ミニPOS」を活用すれば、催事でのキャッシュレス決済がよりスピーディーになる

「ミニPOS」を活用すれば、催事でのキャッシュレス決済がよりスピーディーになる

「ミニPOS」は外商の強化にも活躍。訪問先で決済を完了できるのは、業務効率の向上にもつながる

「ミニPOS」は外商の強化にも活躍。訪問先で決済を完了できるのは、業務効率の向上にもつながる

ECとギフトシステムの統合で百貨店をサポート

RITSと同じく生まれ変わるのがECサイト構築パッケージだ。手を加えていないわけではなく、バージョンアップは繰り返してきたが、抜本的に見直して完全自前主義から脱却。約3万3000ものショップが利用するShopifyをベースに、これまで培ってきた知見を融合させ、独自のパッケージに仕上げた。新たに開発したShopify用のアプリ「OrderHUB」が、Shopifyの強みを生かしながら、ウィークポイントを補完する。

これまで350社以上にShopifyを使ったECサイトの構築・運用をサポートしてきたウェブライフ社の法人向けSaaS型ECプラットフォーム「BiNDec(バインド・イーシー)」も採り入れた。

「背景として、今やECは無料で始められ、個人事業主も少なくない。ECサイト構築パッケージも完全なオーダーメイドから幅が広がっており、ITFOReCは機能や価格での優位性が弱まってきた」。事業本部事業推進部第2グループスペシャリストの藤田洋右氏が方針転換の意図を説明する。続けて「開発期間は従来の半分で、コストも下がる。Shopifyは必要な機能をアプリで追加できるため、拡張性も高い。Shopifyはユーザーに要望などをヒアリングし、カスタマイズを前提にしていたため、立ち上げにも改良にも時間とコストがかかった。ShopifyはSaaS型で、システムの改修にかかっていた時間やコストを低減できる。(Shopifyの運営企業が拠点を置く)カナダと日本の商習慣の違いから、かつては宅配、のしやメッセージカード、後払い、領収証などに対応できない課題があったが、今はアプリを利用すれば解決できる」と特長を強調する。

アイティフォーが新しいECサイト構築パッケージで百貨店各社に提案するのは、ECとギフトシステムの統合だ。百貨店各社が長く解決できていない課題でもある。アイティフォーはアプリやゲートウェイサービスを介してRITSとOrderHUBを連携させ、店頭のギフトシステムとECの両方でポイントを貯めたり使ったり、登録した住所を呼び出したりできるようにする。外商でもECに商品を登録しておけば、担当者が訪問先で注文を処理できる。

10月2日には、ユーザーかどうかを問わない百貨店各社向けのオープンセミナーを開催。広く利用者を募る。「百貨店各社に聞くと、お客様から『中元や歳暮をECサイトで買おうとした時に、ギフトセンターでの注文履歴を見られなくて困る』、『もう1回、ECサイトで住所などを登録しなければならないのは苦痛』といった声が届いている。

ECとギフトシステムを統合すれば、作業や配送追跡などを一本化できる。百貨店各社、お客様の両方に面倒がない。これまではPOS、EC、ギフトなどのITベンダーが別々で、統合のネックになっていた。それを解消するインフラがShopifyだ」と戸枝氏。

RITSとECサイト構築パッケージを同時に一新し、百貨店業界に精通したITベンダーとして、さらなる進化を遂げる。

※当記事は、株式会社ストアーズ社の許諾を得て転載しています。
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掲載日:2025年8月28日